ドキュメンタリー映像『アラカシ』

美郷町北郷で繰り返される、土と木と水と火をめぐる循環の営みを丁寧に見つめました。

著作:美郷町  監修:美郷町備長炭製炭技術保存会
制作:オノコボデザイン

宮崎県無形民俗文化財に指定された、美郷町の製炭業

ここは、紀州、土佐と並び日本三大備長炭の産地の一つとされています。 他の産地が『ウバメガシ』を原木とするのに対し、ウバメガシが自生していない美郷町では、 備長炭に焼くのが比較的難しいとされる樫の木『アラカシ』を原木とします。 炭木を詰める窯本体とは別に、『小窯』と呼ぶ焚き口を設け、乾燥の工程に三十日以上をかけるなど、美郷独特の技術が発達しました。

黒炭と白炭

木炭は黒炭と白炭に大きく分けられます。 どちらも原木を乾燥させ、酸欠状態で炭化させます。
黒炭は炭化の工程の後、完全に窯を密閉し、そのまま火を消してしまいます。焼きしまって いない分、柔らかく、着火しやすく、早く燃焼するのが特徴です。 一方白炭は、炭化の後、炭を千度以上の高熱で精錬します。最高温度のまま窯出しし、即座 に『スバイ』という灰を被せて強制的に消火する事で、堅く焼きしまった炭になります。灰によって炭の表面が白く化粧されていることから白炭と呼ばれるのです。白炭は叩けば金属のような音がするほど堅く、火持ちが良いのが特徴です。白炭の中でも特に炭素純度が高く、安定して燃焼する高品質なものが備長炭と呼ばれているのです。

里山から海へ

アラカシは、急斜面の岩場のような生育条件の悪いところにでも育つことが出来、急斜面の山肌が雨で浸食されるのを防いでいます。また毎年、実を落とし、イノシシなどの野生動物に食料を提供しています。落ち葉は、分解されその養分が川を伝って、海のプランクトンを育み海を豊かにしています。
しかしアラカシも、大きくなりすぎると、表土の薄い急斜面では株ごと倒れてしまいます。 炭焼きはそうなる前に伐採し、山を若返らせます。アラカシは切り株から新たに芽を出し、二酸化炭素を吸収しながら繰り返し成長します。江戸時代から続く炭焼きの営みが、山を守り、同時に海、生き物、地球環境も守ることに繋がっているのです。

美郷町役場農林振興課
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